忙しい毎日に追われ大事なものを見失いそうで
昨晩、出口の見えない業務に、残業代ばかりかけても利益にならんと思い、とりあえず明日の自分に申し送り書をメモっていたところ、息子の部屋からモヤモヤした唸り声が聞こえてきた。上司に在宅勤務の完了報告のメールを出し、息子の部屋に覗きに行く。
持続化給付金の申請が下りなかったらしい。その理由が、確定申告の事業所得欄が空欄であって、0記入がないからという理由。
仕方がないので、もう一度申告書を作成するも、機械に疎い息子は、どうやって申告書を印刷したのか記憶が曖昧である。思うようにいかないとイライラする息子。
不惑の四十を迎えてから、息子のイライラに引っ張られることなく、状況を俯瞰して見れるようになった。若い頃のわたしそっくりやなー、いや、わたしが父に似ているからなのだから、この子も父に似ているんだな、遺伝子ってちゃんと受け継がれてるんだなー。そういやわたしの祖父は酒を飲むと感情の表現ボリュームが振り切れる人だったな、じゃー、先祖代々こんな感じで来てるんだろうか。わたしが悟りを開いて、遺伝子情報を書き換えたいなー、せめて孫かひ孫までには、先祖代々のトラウマを解消してやりたいなー、などと思ったりする。
どうにかこうにか入力し、いざPDFにダウンロードするボタンを押すと、ビジー状態でダウンロードが始まらない。思わず「さっき“金なんていらない”っていうからじゃない?」と苦言をいってしまう。
ボケとツッコミ世界に触れていると、どうしても自虐的な要素を拾って笑いに持って行きたくなるのが悪い癖である。コントや漫画にし、客観的な状況で見れば笑える流れなのかもしれないのだが、言われた本人が笑えないのは、考えなくてもわかることだ。わたしもまだ未熟者だと自己嫌悪に陥る。
ところが、息子の怒りはわたしに向けられずに、天に向かって放たれた。言ってはいけないセリフ。親のわたしが悲しくなるようなセリフ。怒りというよりは、悲しみがとまらない。アイキャントストップロンリネスby杏里である。
何度もボタンを押すと「ダウンロード中だ、開始しないのなら出直してきな」とメッセージが出る。By杏里状態のわたしは、いたたまれなくなって夕飯の支度をしようとキッチンに向かうも、昼に息子が調理したフライパンやら食器やらがそのままになっている。時計を見るともう21時を回っている。冷蔵庫を見ても、消化に良さそうなものをチョイスするには選択肢がなかった。肩を落として小言を吐いては茶碗を洗う。息子の部屋からは「オレが洗う」と声は聞こえるものの、キッチンにくる気配はない。洗い終えて再び冷蔵庫を開ける。何度見ても食材は一緒。ピーピーピー!数秒開けっ放しにしていると鳴り始める警告音が響く。その音が、わたしの起死回生後の人生に対し、不合格を言い渡されたような気がして、悲しみが止まらない。
あぁ、修行が足りぬ。浄化が足りぬ。ハッピーライフの練習を何度しても、まだまだしあわせには届かない。
PCも書類も広げっぱなしのままのデスクを見て、決意をする。
アフターコロナのライフスタイルを、ちゃんと見直そう!
在宅勤務開始後に溜まった山積みになった書類を、涙を流しながらビリビリ引き裂いてはゴミ箱へ捨てる。
悲しみよ、さようなら。明日からわたしは、生まれ変わるよ。
そう言いながらビリビリ引き裂く。
175Rの「ハッピーライフ」を脳内で歌いながら。
辛い時、悲しい時はいつも音楽が癒してくれる。あぁ、ありがとう。