Watana Bear's journey of life

旅するしろくま

とろろごはん オカンと、私と、時々オトン

元旦、出かける直前の息子と愉快な仲間たちに、あわただしくおせちをふるまいました。時間がないというので、盛り付ける暇もなく、無機質なプラスチックの保存容器を食卓に並べてお箸を使ったつまみ食い状態。こんなことならお重を購入しておけばよかったと思った瞬間でした。

f:id:clara-stoopman:20220103222354j:plain

「おせちって、子供の頃はおいしく食べれるものが少なかったけど、大人になるとおいしく感じるものが増えてきた」

一人がそういいました。たしかに、私も子供の頃は栗きんとんしか手を付けなかったような気がします。

***

お正月に出される料理で楽しみにしていたのは、とろろご飯でした。お正月のごちそうで疲れた胃腸を癒す効果のはずが、食べ過ぎてしまい、お腹を壊す勢いでした。

f:id:clara-stoopman:20220103222511j:plain

母が作るとろろは、出汁から作る本格派。大晦日のダイニングに置かれた石油ストープの上には、出汁を取るための鍋が置かれていました。醤油やみそなどで味付けされた出汁は、気づけば冷まされており、冷ましながら濾しきれなかった壊れた煮干しの粉を沈殿させていました。不注意でうっかり動かそうものならば「あぁ~っ!」と嘆きに近い警告が響きます。

ゆっくり時間をかけて煮干しが沈み切る間に、すり鉢にとろろがすられた状態で準備万端整います。単身赴任で不在がちの父でしたが、父がいる時は父がよくゴリゴリしていたのを覚えています。

わたしはというと、すり終わったとろろに味付けされた出汁を混ぜる係。すり鉢の中のとろろをすりこぎ棒で優しく手早く回す傍らで、母が出汁を入れていくのです。沈殿した煮干し粉をすくってしまわないように、そっと静かにおたまですくい、すり鉢のへりから静かに注いでいきます。

白いとろろと出汁の茶色のコントラスト。ぐるぐると回るすりこぎ棒によって、それはマーブル状になり、徐々に一体化していく。出汁がとろろに混ざりこむと、また新しく出汁が注がれる。

静けさの中で、すりこぎ棒とすり鉢がこすれる「ゴリゴリ」といった音が響きます。一気に混ぜることができないもどかしさや、焦燥感を抑えながら回し続けるその行為は、茶道とか習字のすみを磨るのと近いような気がします。

上京してからすっかり忘れていたとろろご飯。ふっと思い出したので、今年は息子を誘ってお店に食べに行くことにしました。

f:id:clara-stoopman:20220103225328j:plain

牛たん・とろろ・麦めしの「ねぎし」に行ってきました。

r.gnavi.co.jp

母のとろろは濃い目の味で、塩鮭とネギをトッピングするのですが、ねぎしのとろろはお上品な味でした。

お正月に食べるとろろご飯のことを「三日とろろ」というそうですが、地域によっては元旦に食べたり、2日に食べたり、4日にたべたりと様々です。

風習は人から人に口伝えで渡り、その土地、そこに住む人の都合で徐々に変化していくものです。我が家は、食べたくなったら食べる風習。

今年一年の健康を祈願して、おいしゅうございました。

TOP