Watana Bear's journey of life

旅するしろくま

子どもの「なぜ」は大人になって昇華する

「内輪差」という言葉を知ったのは、自動車教習所に通った時のことです。左折する際に、前輪より後輪が内側に軌道を取ることを内輪差と言います。

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内輪差とは車を右折、左折させる際にできる内側の前輪と内側の後輪の進む軌道のズレのことをいいます。車のハンドルは前輪の動きを操作し後輪は前輪の動きに沿って動きますが、カーブする際は必ず前輪と後輪の軌道にズレが生じるのです。大型車やトラックなどホイールベース(前輪と後輪の中心の距離)が長い車ほど軌道のズレが大きくなります。

内輪差・外輪差とは?事故を防ぐコツと計算方法|チューリッヒ

左折時の巻き込み事故防止は、免許取得後も講習で耳にすることがあるので、普通免許を持っている人ならば、なんとなく聞いたことがあると思います。もしくは、この内輪差に苦戦して「車庫入れ」が苦手な人も少なくないはずです。

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そんな専門的な単語を知ることのなかった幼少期に、わたしはこのタイヤの軌道について「なぜ」と思っていた時期があります。

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女児ひとりの我が家に、なぜか黄色のダンプカーのミニカーがありました。誰が何のために買ったのか、もしくは誰かの忘れ物なのか全く記憶にありません。もしかしたら私がおねだりして買ってもらったものなのかもしれませんが、本当のことはわかりません。

冬になるとコタツが出されました。そのコタツの天板は朱色で、縁にグリーンの模様がちょうどミニカーの幅がぴったり収まる幅であしらわれたものです。それが道路のように見えたわたしは、その黄色いミニカーを走らせて遊んでいました。

ところが、角を曲がる時、どうしても上手に曲がれません。何度、ゆっくりと丁寧に走らせても、上手に曲がることができません。

前輪が通ったところを後輪が通るように走らせようとすると、車は不自然に横滑りをしているように見える。やり直しのためバックさせると、今度は前輪が分離しているように見える。それがとても気持ち悪くて、なんどもやり直します。

もし、私が天才級の頭脳をもっていたのなら、すぐさま内輪差・外輪差に気づき、ピタゴラスの定理を上手に操り、ササっと軌道を描けたのでしょう。

残念ながらわたしは、凡人、並の人、中の下と中の上という小さな争いをするチッサイ脳みそしか持っておらず、その「なぜ」は不快感のまま、二十歳で免許を取得するまで封印してしまいます。

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その後まさか、この内輪差と外輪差を教える側の立場になるとは思いもよらず。あのころ、封印してしまった「なぜ」が、「教習指導員」という職業に就くことで昇華したのでした。さすがにピタゴラスの定義を使って、軌道を描くことまではしませんでしたが、教習車を使って狭い教習所のコース内にキレイな弧を描くことができました。

幼いあの時、父や母に「どうしてこうなるの」と聞くことはしませんでした。熱心にひとりで「内輪差」の疑問を追究し続けてきたわけではありません。スピリチュアル風にいうならば、あのころの「なぜ」という思いや意識が、十数年かけて引き寄せられたということなのかもしれません。

無意識に選択してきたものが、心の中で欲している情報につながる。科学的に証明されたエネルギーの法則を、些細なコトで感じるわけで。

もし、なんのために生きているの?とだれかに聞かれたら、今のわたしならこう答えます。生きる意味は特別ないけれど、たくさんの「なぜ」を楽しむために生きていると思う、と。においますね。臭いですよ。

子どもの「なぜ」に上手に答えようとする大人、もしくは適当に流す大人、色々な大人がいます。すぐに答えを与えることも、適当に流すことも子供の「なぜ」を昇華するためにはなりません。一緒に考えてくれる大人こそが、子どもの「なぜ」を育てていくんだと思います。

もしこの先、幼い子どもと過ごす時間が持てるのならば、小さな「なぜ」が生まれる環境や機会を大切にし、一緒に「なぜ」を探求し育てていける大人でありたいです。

 

幼少期シリーズ

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